ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

ブラッドさんは、先ほど語った魔剣の起源、つまり彼らが元は生きた人間であったという衝撃的な事実に、さらに重い事実を付け加えた。

「魔剣になる条件というのが、どうやら『死ぬこと』らしくてな。だからエアの守護者たちは全員、その肉体としての生を終えて死んでいる」

その言葉に、俺の背筋に再び冷たいものが走った。

「しかし、エアは彼らの魂を消滅させることなく、強大な魔力としてそれぞれの剣に込めたんだ。だから、魔力(魂)を持った剣――『魔剣』と呼ばれるようになった」

エクレールさんたちの魂が込められているということは、彼らは自らの命と引き換えに剣になったということか。

ブラッドさんは淡々と語るが、その事実はあまりにも残酷だ。壮大な使命のためとはいえ、自分の命を投げ打った者たちの魂が、今、俺の手の中にある。

「でもこの世界の奴らは、そんなこと知っているわけもない。だから魔剣とは特殊な魔力を持った剣だと、ほとんどの人がそう認識しているだろう」

確かにブラッドさんの言う通り、俺も魔剣は強い魔力を持っている特別な剣だとそう認識していた。

魔法書にも『特別な魔力を持った特殊な剣』と記されているのを見たことがあった。

だが、その真の正体が『エアの守護者たちの魂が込められた剣』だと、そう記された魔法書を見たことがないし、人から聞いたこともなかった。

知らなかったと言うよりも、誰も知り得ない事だと言った方が良いのかもしれない。俺たちが沈黙してその重い事実を消化しようとしている中、テトの声が響いた。

「ふ〜ん、なるほどね。それじゃあ、私から一つ質問をしても良いかしら?」

テトはまるで学者然とした態度で、机の上にひらりと身軽に飛び乗ると、尻尾を左右に優雅に揺らしながらブラッドさんに問いかけた。その好奇心旺盛な瞳は、真剣そのものだ。

「あなたはその魔剣と守護者たちを集めて、何をしようとしているのかしら?」

その質問は、俺たち全員が抱いていた最も重要な疑問だった。カレンもソフィアも、そしてロキも、皆、真剣な眼差しでブラッドさんを見つめた。

「……」

その質問にブラッドさんは目を細める。彼の表情は一瞬、遠い昔を懐かしむような、複雑な色を帯びた。

そして、彼は決意を込めたように静かに答えた。

「エアと守護者たちが交わした約束を果たすために」

「約束?」

ブラッドさんの言葉に、カレンを除く俺たちは首を傾げた。カレンは既に何かを知っているのか、静かにその答えを待っている。

ブラッドさんは、俺たちの戸惑いをよそに言葉を続けた。

「エアと守護者たちは生前、この世界を作る前にある約束をしたんだ。約束がどういう物なのかは、守護者と魔剣が全員集まらないと分からない。その約束を果たすためにも、守護者たちは一刻も早く集まらなければならない。だから俺は魔剣と守護者たちの行方を追っているんだ」

「……この世界?」

テトは『この世界』という言葉に目を細めた。その言葉に引っかかる何かがあったようだ。

その様子を見ながら、ブラッドさんは話題を少し変えるように言葉を続ける。

「お前たちは、エアが九種族戦争を終わらせた話をどこまで知っている?」

「大体の事は知っています。九種族戦争を終わらせたエアは、魔法というものを生み出し、そしてその知識をトトがみんなに広めてくれたと」

ソフィアが、教科書で習う通りの歴史を答えた。

「そう、俺たちが知っている話ではそこまでは。しかし、その話にはいくつか省略されている部分が多々ある」

「えっ?」