「え、エクレール?」
レーツェルは、先ほどの重々しい警戒がどこへ行ったのかと戸惑い彼女の名前を呼ぶ。しかしエクレールは、視線が一点に吸い寄せられたまま、その視線を動かそうとしない。
「そう言えば、ちょっと気になったことがあるのです」
「気になったこと?」
俺もまた、その真剣な凝視に身構える。いったい、ブラッドの信用問題から一転して何に興味を惹かれたというのだ?
そう思って首を傾げた時、エクレールの目が捉えていたものが判明した。それはレーツェルの左手の薬指に静かに輝く、俺が贈った金色の指輪だった。
エクレールは目を細めてその指輪を見つめ、次いで俺の左手の薬指にも同じ指輪が付いているのを確認した。
一瞬の沈黙の後――エクレールの周りに、本当に薔薇とハートマークが飛び交っているのではないかと思うほどの、最高にロマンティックな笑顔が弾けた。
「あらあら、まあまあ! お二人とも婚約なさったのですね!」
「……っ!!」
その弾けるような祝福の言葉に、俺とレーツェルは反射的に互いから顔を背け一気に顔を真っ赤にした。
「どうして早く言ってくれないのです! 知っていれば特別なお菓子を用意しましたのに! 更にもっと早く言ってくれれば、結婚の準備だって万端にしたのですよ!」
エクレールは手をパチパチ叩きながら、まるで自分のことのように興奮している。
「い、いや、それは別に良いんだ! 結婚式の準備なんてしなくて!」
「そ、そうです! まだ……そんな、大袈裟なことでは……!」
た、確かに婚約したという意味で、俺からレーツェルに指輪は贈った。だが、「結婚」というのは守護者全員の使命を果たした後で、改めて……と、二人とも考えていたのだ。
「そんな! 大袈裟どころか一生に一度の大事ですよ! あっ! それなら最高のアイディアを思いついたのです!」
エクレールは人差し指を立てて、きらめく瞳で提案した。
「全員が揃って約束を果たした記念に、最高の結婚式をあげるのです! わたくしが専属ウェディングプランナーになります!」
「えっ、ええ!」
レーツェルは顔を赤くしたまま、もはや勢いに押されて生返事をするのが精一杯だった。
その後のエクレールは止まらない。彼女は熱心にレーツェルの手を握りしめ、「どんなドレスを着たいのか」「式場の装飾はどんな花で」「料理は地元の素材で」など、具体的な質問攻めを始めた。
レーツェルは恥ずかしさのあまり、小声で「あ、あの……」と呟くことしかできない。
俺たちは和やかなパニック状態に陥っていた。そんな俺たちの様子を、サファイアは口元に優しい笑みを浮かべながら、壁にもたれて静かに見守っていた。
そのサファイアにも、エクレールの熱血指導が飛ぶ。
「こうして指をくわえている場合ではありません! サファイアも早くコスモスさんに告白するのです! そしてこの幸せな流れに乗るのです!」
「その話しはもう良いだろ! 蒸し返すな!」
サファイアはさすがに耐えかねたように叫び、壁から離れる。
だがこの賑やかさは、俺たちの心に小さな安らぎを与えてくれたのも事実だ。
守護者たちが全員集う日は、着実に近づいている。だからもう少しだけ待っていてくれ、トト。
レーツェルは、先ほどの重々しい警戒がどこへ行ったのかと戸惑い彼女の名前を呼ぶ。しかしエクレールは、視線が一点に吸い寄せられたまま、その視線を動かそうとしない。
「そう言えば、ちょっと気になったことがあるのです」
「気になったこと?」
俺もまた、その真剣な凝視に身構える。いったい、ブラッドの信用問題から一転して何に興味を惹かれたというのだ?
そう思って首を傾げた時、エクレールの目が捉えていたものが判明した。それはレーツェルの左手の薬指に静かに輝く、俺が贈った金色の指輪だった。
エクレールは目を細めてその指輪を見つめ、次いで俺の左手の薬指にも同じ指輪が付いているのを確認した。
一瞬の沈黙の後――エクレールの周りに、本当に薔薇とハートマークが飛び交っているのではないかと思うほどの、最高にロマンティックな笑顔が弾けた。
「あらあら、まあまあ! お二人とも婚約なさったのですね!」
「……っ!!」
その弾けるような祝福の言葉に、俺とレーツェルは反射的に互いから顔を背け一気に顔を真っ赤にした。
「どうして早く言ってくれないのです! 知っていれば特別なお菓子を用意しましたのに! 更にもっと早く言ってくれれば、結婚の準備だって万端にしたのですよ!」
エクレールは手をパチパチ叩きながら、まるで自分のことのように興奮している。
「い、いや、それは別に良いんだ! 結婚式の準備なんてしなくて!」
「そ、そうです! まだ……そんな、大袈裟なことでは……!」
た、確かに婚約したという意味で、俺からレーツェルに指輪は贈った。だが、「結婚」というのは守護者全員の使命を果たした後で、改めて……と、二人とも考えていたのだ。
「そんな! 大袈裟どころか一生に一度の大事ですよ! あっ! それなら最高のアイディアを思いついたのです!」
エクレールは人差し指を立てて、きらめく瞳で提案した。
「全員が揃って約束を果たした記念に、最高の結婚式をあげるのです! わたくしが専属ウェディングプランナーになります!」
「えっ、ええ!」
レーツェルは顔を赤くしたまま、もはや勢いに押されて生返事をするのが精一杯だった。
その後のエクレールは止まらない。彼女は熱心にレーツェルの手を握りしめ、「どんなドレスを着たいのか」「式場の装飾はどんな花で」「料理は地元の素材で」など、具体的な質問攻めを始めた。
レーツェルは恥ずかしさのあまり、小声で「あ、あの……」と呟くことしかできない。
俺たちは和やかなパニック状態に陥っていた。そんな俺たちの様子を、サファイアは口元に優しい笑みを浮かべながら、壁にもたれて静かに見守っていた。
そのサファイアにも、エクレールの熱血指導が飛ぶ。
「こうして指をくわえている場合ではありません! サファイアも早くコスモスさんに告白するのです! そしてこの幸せな流れに乗るのです!」
「その話しはもう良いだろ! 蒸し返すな!」
サファイアはさすがに耐えかねたように叫び、壁から離れる。
だがこの賑やかさは、俺たちの心に小さな安らぎを与えてくれたのも事実だ。
守護者たちが全員集う日は、着実に近づいている。だからもう少しだけ待っていてくれ、トト。


