今の僕があるのは、間違いなく彼女のおかげでもあるんだ。親父のことも、使い魔としての道も。
「ありがとう、テト。お前にはいつも助けられてばっかりだな」
素直な気持ちを口にすると、テトは目を丸くして少し驚いたように聞き返した。
「なによ? 突然お礼を言うだなんて、珍しいじゃないの?」
「いや……改めて言ってなかったと思ってさ」
「……ふ〜ん」
テトは短く唸るような声を漏らすと、ふわりと光の粒子を残して黒猫へと姿を戻した。そして、軽やかに僕の右肩の上に乗ってくる。黒い毛並みが、夜の闇に溶け込みそうだ。
「もし、お父さんに会いに行くのがまだ気まずいなら、私が代わりに先に行って色々とフォローしてあげようかしら?」
「大丈夫さ。もう僕だって一人で色々と出来るんだし、決めたことを覆す気はないよ」
「あら、そうかしら? 私から見たら、あなたはまだまだ子供よ?」
肩の上でテトは面白がるような声を出した。その言葉にカチンと苛立ちが走った僕は、両手を使ってテトの柔らかい体を掴み上げる。
「にゃっ!」
テトは、小さな抗議の鳴き声を上げた。
「いい加減さ、僕を子供扱いするの辞めてくれないかな? 僕だってもう立派な狼人族の大人なんだ。テトが居なくたってやっていける」
挑むような眼差しを向ける僕に対し、テトは何も言い返すことなく、ただじっと、僕の顔を黄金の瞳で見つめてくる。猫の姿なのに、その眼差しには深い知性とからかうような感情が読み取れた。
「なんだよ?」
その様子に首を傾げた、まさにその時だった。
彼女は僕の両手の中で、再び人間の姿へと戻った。
「うわっ!」
突然の体重増加と衝撃により、僕はそのまま体勢を崩して後ろに倒れ込み、テトが覆いかぶさるような形で地面に背中を打ち付けた。
テトの柔らかな体が僕の上に乗り、僕の体は彼女の細い腕の中に閉じ込められた。
至近距離で、月明かりを反射した黄金の瞳がキラキラと煌めいている。その瞳を見た瞬間、俺の心臓の鼓動がドクンと早くなっていき、頬も体も熱くなっていくのを感じた。
「ムニン……」
そして彼女は、優しく、熱を帯びたような声音で俺の名前を呼んだ。その声に不覚にもドキッとして、慌てて彼女から目を逸した時だった。
「ほら、もうその時点であなたは子供よ」
フッと笑うテトの声が、すぐ耳元で響く。
「……はあ?!」
テトは僕の上でもう一度黒猫の姿に戻ると、そのまま軽やかにジャンプして、何事もなかったかのように僕のすぐ後ろに下り立った。その動作には、一片の動揺もなかった。
「ありがとう、テト。お前にはいつも助けられてばっかりだな」
素直な気持ちを口にすると、テトは目を丸くして少し驚いたように聞き返した。
「なによ? 突然お礼を言うだなんて、珍しいじゃないの?」
「いや……改めて言ってなかったと思ってさ」
「……ふ〜ん」
テトは短く唸るような声を漏らすと、ふわりと光の粒子を残して黒猫へと姿を戻した。そして、軽やかに僕の右肩の上に乗ってくる。黒い毛並みが、夜の闇に溶け込みそうだ。
「もし、お父さんに会いに行くのがまだ気まずいなら、私が代わりに先に行って色々とフォローしてあげようかしら?」
「大丈夫さ。もう僕だって一人で色々と出来るんだし、決めたことを覆す気はないよ」
「あら、そうかしら? 私から見たら、あなたはまだまだ子供よ?」
肩の上でテトは面白がるような声を出した。その言葉にカチンと苛立ちが走った僕は、両手を使ってテトの柔らかい体を掴み上げる。
「にゃっ!」
テトは、小さな抗議の鳴き声を上げた。
「いい加減さ、僕を子供扱いするの辞めてくれないかな? 僕だってもう立派な狼人族の大人なんだ。テトが居なくたってやっていける」
挑むような眼差しを向ける僕に対し、テトは何も言い返すことなく、ただじっと、僕の顔を黄金の瞳で見つめてくる。猫の姿なのに、その眼差しには深い知性とからかうような感情が読み取れた。
「なんだよ?」
その様子に首を傾げた、まさにその時だった。
彼女は僕の両手の中で、再び人間の姿へと戻った。
「うわっ!」
突然の体重増加と衝撃により、僕はそのまま体勢を崩して後ろに倒れ込み、テトが覆いかぶさるような形で地面に背中を打ち付けた。
テトの柔らかな体が僕の上に乗り、僕の体は彼女の細い腕の中に閉じ込められた。
至近距離で、月明かりを反射した黄金の瞳がキラキラと煌めいている。その瞳を見た瞬間、俺の心臓の鼓動がドクンと早くなっていき、頬も体も熱くなっていくのを感じた。
「ムニン……」
そして彼女は、優しく、熱を帯びたような声音で俺の名前を呼んだ。その声に不覚にもドキッとして、慌てて彼女から目を逸した時だった。
「ほら、もうその時点であなたは子供よ」
フッと笑うテトの声が、すぐ耳元で響く。
「……はあ?!」
テトは僕の上でもう一度黒猫の姿に戻ると、そのまま軽やかにジャンプして、何事もなかったかのように僕のすぐ後ろに下り立った。その動作には、一片の動揺もなかった。


