「俺がここへ来たのは、この島から感じる闇の魔力が何なのかを突き止めるためと、魔剣エクレールを覚醒させるためなんだ。でもその前に俺は、エーデルとある約束をしていた」
ブラッドさんは、そこで一旦言葉を区切ると、真剣な眼差しで俺たちを見据えた。
「もし出産の時期になったら、自分の子供を取り上げてほしいってな。この任務は、彼女と交わした約束の履行でもあったんだ。だからその件も含めて、俺はこうしてここへやって来たんだ」
「だから先生はこの島へ来たんですね」
カレンが深く納得したように呟いた。
「そういうこと」
ブラッドさんはそう言ってカレンへ優しく微笑むと、再び静かにエーデルの側で眠っている子竜へと目を戻す。彼の表情には、安堵と一抹の疲労が浮かんでいた。
「エーデルは誰より先に、この島に黒い粒子がやってくることを知っていた。だから自分の光の加護を使って時空の割れ目を塞いでいた」
ブラッドさんは眠っている子竜へと近づくと、そっと優しく白い体を撫でる。
「しかしタイミングが悪かったんだ」
そして、俺たち全員に聞こえるように、はっきりと言い切った。
「エーデルは妊娠していた」
その衝撃の事実に、俺たちは目を見張った。 じゃあ……エーデルが自分の行方を眩ませたのは……。
「理由はもちろん二つある」
ブラッドさんが重々しく頷いた。
「もちろん行方を眩ませたのは我が子を守るためと、それと同時に自分の命を守るためってこともある」
「その通りなのですよ」
澄んだ声が響き、そこにいたのはエクレールさんだった。
「エクレールさん?」
俺が驚いて呼ぶと、エクレールさんはニコニコしながら、エーデルの側にいる子竜へと近づき、ブラッドさんと同じく優しい手付きで子竜の体をさすった。
「白竜は出産する時に、光の加護を一時的に失ってしまうんです。それは、命を生み出すための代償なのです。その状態のエーデルでは、闇の侵攻を食い止めることや、時空の割れ目を抑える事は難しいのです。ですから、出産による加護の回復を待つため、出産が終わるまでここへ身を隠し、ブラッドが来るのを待っていたのですよね?」
エクレールさんの言葉にエーデルは深く頷いた。そのまま、感謝を示すように彼女へと顔を擦り寄せた。
「とても嬉しいのですよ、エーデル。これでラグにも兄弟が出来たのですから」
「はい……」
エーデルはそのまま俺たちへと目を戻した。瞳には深い悲しみの色が宿っている。
「あなた方にはご心配をおかけしました。そして……ヨルンのことも。私がもっと早くに気づいていれば、あの子が死ぬことはなかったのかもしれません」
「……エーデル」
その言葉にザハラは辛そうに表情を歪めると口を開く。
「ヨルンのことは……エーデルが謝ることはありません。むしろ私が謝らなくてはいけないのに……。私が巫女として、エーデルの苦悩を察してあげられなかった」
「ザハラ。あなたは巫女として民を守ってくれました。私は感謝しているのですよ?」
「でも……」
ブラッドさんは、そこで一旦言葉を区切ると、真剣な眼差しで俺たちを見据えた。
「もし出産の時期になったら、自分の子供を取り上げてほしいってな。この任務は、彼女と交わした約束の履行でもあったんだ。だからその件も含めて、俺はこうしてここへやって来たんだ」
「だから先生はこの島へ来たんですね」
カレンが深く納得したように呟いた。
「そういうこと」
ブラッドさんはそう言ってカレンへ優しく微笑むと、再び静かにエーデルの側で眠っている子竜へと目を戻す。彼の表情には、安堵と一抹の疲労が浮かんでいた。
「エーデルは誰より先に、この島に黒い粒子がやってくることを知っていた。だから自分の光の加護を使って時空の割れ目を塞いでいた」
ブラッドさんは眠っている子竜へと近づくと、そっと優しく白い体を撫でる。
「しかしタイミングが悪かったんだ」
そして、俺たち全員に聞こえるように、はっきりと言い切った。
「エーデルは妊娠していた」
その衝撃の事実に、俺たちは目を見張った。 じゃあ……エーデルが自分の行方を眩ませたのは……。
「理由はもちろん二つある」
ブラッドさんが重々しく頷いた。
「もちろん行方を眩ませたのは我が子を守るためと、それと同時に自分の命を守るためってこともある」
「その通りなのですよ」
澄んだ声が響き、そこにいたのはエクレールさんだった。
「エクレールさん?」
俺が驚いて呼ぶと、エクレールさんはニコニコしながら、エーデルの側にいる子竜へと近づき、ブラッドさんと同じく優しい手付きで子竜の体をさすった。
「白竜は出産する時に、光の加護を一時的に失ってしまうんです。それは、命を生み出すための代償なのです。その状態のエーデルでは、闇の侵攻を食い止めることや、時空の割れ目を抑える事は難しいのです。ですから、出産による加護の回復を待つため、出産が終わるまでここへ身を隠し、ブラッドが来るのを待っていたのですよね?」
エクレールさんの言葉にエーデルは深く頷いた。そのまま、感謝を示すように彼女へと顔を擦り寄せた。
「とても嬉しいのですよ、エーデル。これでラグにも兄弟が出来たのですから」
「はい……」
エーデルはそのまま俺たちへと目を戻した。瞳には深い悲しみの色が宿っている。
「あなた方にはご心配をおかけしました。そして……ヨルンのことも。私がもっと早くに気づいていれば、あの子が死ぬことはなかったのかもしれません」
「……エーデル」
その言葉にザハラは辛そうに表情を歪めると口を開く。
「ヨルンのことは……エーデルが謝ることはありません。むしろ私が謝らなくてはいけないのに……。私が巫女として、エーデルの苦悩を察してあげられなかった」
「ザハラ。あなたは巫女として民を守ってくれました。私は感謝しているのですよ?」
「でも……」


