僕が生まれて、およそ二十年が経った。

僕たち狼人族は、人間族(ヒューマン)と比べて身体の成長が遅い。他の種族も同じだ。

二十年経った僕の身体は、人間でいう十二歳ほどの体格でしかなかった。

ずっと「異端児」扱いされてきたけれど、もう慣れっこだった。二十年近くもそう呼ばれ続ければ、慣れてしまうものだ。

「母さん、ただいま。今夜は子鹿の肉を――」

家の扉を開けた瞬間、室内に数人の男たちがいることに気づいた。その中心に立つ、見覚えのある人物。僕はその男を睨みつけた。

「親父……!」

男たちの中心に立っていたのは、僕の父親だった。

どうしてここにいるんだ? また僕を異端児と罵りに来たのか?

様々な考えが頭を駆け巡る中、母さんの姿が見当たらないことに気がついた。

「……母さんは、どこだ?」

僕が子鹿を床に投げ出すと、周りの男たちは小さく歓声をあげた。

「まさか、その身体で狩りができるとは」

「さすがフォルティス様の息子だ」

その言葉に、僕の怒りは頂点に達する。拳に力を込め、声を荒げた。

「今さら何の用だよ! 今まで散々異端児扱いしてきたくせに、今頃になって息子扱いかよ!? ふざけるな!」

荒い息を整えながら、僕は父親を鋭く睨みつけた。