☆ ☆ ☆

「はあ……はあ……」

サファイアの氷結の力を開放し、黒い粒子の侵食を防ぐために、氷結封絶の魔法を開放していた。魔法を途切れさせまいと、私は必死に意識を保とうとしていた。

しかし、氷結封絶の魔法は、思った以上に魔力を持っていかれる。

両腕も、氷結の力を使った反動で凍りつき、このままでは、全身が氷の中に閉じ込められてしまうのではないか、と一瞬思ったが、ここで魔法の発動を止めるわけにはいかない。

今は少しでも長く、黒い粒子の侵食を防がなければ。

『カレン……本当に大丈夫なのか?!』

「……だい、じょうぶです」

額に血管が浮かび上がり、ドクドクと脈打っている。両目からは血の涙が流れ、頬を伝っていく。

『このまま氷結の力を使い続けたら、お前の身が保たない! もう十分時間は稼げたはずだ、後はあいつに任せて』

「嫌です!」

私はサファイアに、そう力強く叫んだ。

「私は……みんなを守りたい。先生の役に立ちたいんです! それが叶うなら……この身がどうなろうとも関係ありません!」

『カレン……』

本当はもう、とっくに体に限界は来ていた。氷ついた両腕は、すでに感覚を失っている。でも、ここでやめるわけにはいかない。今ここでやめてしまったら、私は絶対に後悔してしまう!

「ぐっ!」

その時、私の体に激しい痛みが走った。

「がはっ!」

『カレン! もうやめろ!』

「…いや、です!」

口の端から血が流れ、体のところどころから血が噴き出し始める。視界も徐々に歪んでいき、意識が遠くなっていく。

そんな私にとどめを刺すように、体全身に激痛が走った時、目の中から光が失われた。

『カレン!』

手の中から柄が離れ、私の体は後ろに倒れていく。サファイアは人間の姿に戻ると、私の体に手を伸ばした。その手を握ろうとしたが、もう体に力は入らなかった。

ああ、このまま私は死ぬのかな──

そんな考えがふと頭をよぎった時、私の体を誰かが支えてくれた。

「……っ」

その拍子に、見覚えのあるフードがひらめき、私の目に金色の髪が映った。

「……ロキ?」

ゆっくりと顔を上げると、そこには懐かしい人の顔があった。その姿を見たら涙がこぼれて、私はすがりつくように叫んだ。

「お願い……します。……みんなを……助けてください……先生!」

その言葉に頷いてくれた先生を見て、安心した私は意識を手放した。