私はまだ、先生が言う「彼女」という人の話を直接聞いたことがない。それでも、先生がその人のために戦っているということは、きっとその人は先生にとって、何よりも大切な人なんだ。
『記憶を見たか?』
突然、頭の中にサファイアの声が流れ込んできた。私は、閉じていた目を開く。
「うん、サファイアと……先生の記憶を少しだけ」
体中からサファイアの魔力がみなぎってくるのを感じた。まるで彼女の力が、私の血となり肉となっていくようだ。これが、サファイアの魔力をまとい、意識を一つにするということ。私は、彼女と一つになったような感覚を覚えた。
『そうか……私も、孤独で過ごした時があったんだ』
サファイアの声は、寂しさを滲ませていた。
「サファイア……あの記憶の中に、たくさんの人がいました。みんな、サファイアを大切に思っているようでした」
『ああ、そうだ。彼らは私を救ってくれた。でも、同時に……』
サファイアは言葉を濁したが、その意味は痛いほど伝わってきた。
『それでも、彼らは私を「力」としてではなく、「私」として見てくれた。それが、何よりも救いだった』
その言葉に、希望が湧き上がる。
『できるだけ時間を稼ぐ。あとは、あいつがどうにかする』
「え……? もしかして……先生がこの島に?」
『ああ、そうだ。きっともう、近くまで来ているはずだ。……さあ、私の後に続いてお前も詠唱を始めるんだ。時間を無駄にしている暇はない』
「はい、わかりました!」
私は意識を集中させ、魔剣サファイアを目の前にかざした。
『凍りし世界に降り注げ、絶対の理を以て万物を封ぜん!』
サファイアの声に合わせ、私も力強く詠唱した。
「凍りし世界に降り注げ、絶対の理を以て万物を封ぜん!」
私たちの詠唱が重なり、体の中に眠っていた氷結の力が、まるで嵐のように強くなっていくのを肌で感じた。体中に力が駆け巡り、額に血管が浮き上がり、ドクドクと脈打つ。体から大量の冷気が発せられ、私の足元から地面を凍らせていく。
「氷結封絶!」
その言葉と同時に、私はサファイアの刀身を地面に突き刺した。
開放された氷結の力は、サファイアを伝い、一斉に森を凍らせていく。黒い粒子を包み込み、その侵食を止めるように、あたり一面が氷に覆われていく。私はその光景を見守りながら、さらに意識を集中させた。
『気を抜くなよ、カレン。あの黒い粒子の力は強大だ。少しでも油断すれば、お前の魔力ごと侵食されるぞ』
「はい、わかっています!」
先生がこの島に来ているのなら、先生ならきっと何とかしてくれる。
今の私にできることは、黒い粒子の侵食を止めること。
あとは、先生に任せる。
「っ!」
その時、頭に激しい痛みが走った。視界が一瞬ぐらりと揺れ、私は地面に片膝をついた。
『カレン! 大丈夫か?!』
頭の中で響くサファイアの焦った声に、私は荒い息を吐きながら答えた。
「はぁ……はぁ……大丈夫です」
これが、氷結の力。
意識を集中させていなければ、魔力に意識を乗っ取られてしまいそうだ。
まるで、自分の体が自分のものではないような感覚。
その圧倒的な力に押しつぶされそうになりながらも、私は必死に意識を保ち続ける。
ここで止めるわけにはいかない――
サファイアの柄を握る私の手は、魔力を開放した反動で、徐々に冷たさを増し、氷に覆われ始めていた。激しい痛みと、感覚が麻痺していくような感覚が、同時に私を襲う。
でも、今はそんなことどうでもよかった。
みんなを守るため、そして私を「道具」としてではなく、「私」として見て認めてくれたロキやサファイアのためにも、絶対にこの黒い粒子を止めてみせる。
この痛みが、その覚悟をより強くする。
そう決意を固めた時、私の左目から一筋の血が流れ落ち頬を伝った。
しかし私はそのことに気づく余裕もなく、ただひたすらに目の前の森を氷で覆い尽くすことに集中していた。
『記憶を見たか?』
突然、頭の中にサファイアの声が流れ込んできた。私は、閉じていた目を開く。
「うん、サファイアと……先生の記憶を少しだけ」
体中からサファイアの魔力がみなぎってくるのを感じた。まるで彼女の力が、私の血となり肉となっていくようだ。これが、サファイアの魔力をまとい、意識を一つにするということ。私は、彼女と一つになったような感覚を覚えた。
『そうか……私も、孤独で過ごした時があったんだ』
サファイアの声は、寂しさを滲ませていた。
「サファイア……あの記憶の中に、たくさんの人がいました。みんな、サファイアを大切に思っているようでした」
『ああ、そうだ。彼らは私を救ってくれた。でも、同時に……』
サファイアは言葉を濁したが、その意味は痛いほど伝わってきた。
『それでも、彼らは私を「力」としてではなく、「私」として見てくれた。それが、何よりも救いだった』
その言葉に、希望が湧き上がる。
『できるだけ時間を稼ぐ。あとは、あいつがどうにかする』
「え……? もしかして……先生がこの島に?」
『ああ、そうだ。きっともう、近くまで来ているはずだ。……さあ、私の後に続いてお前も詠唱を始めるんだ。時間を無駄にしている暇はない』
「はい、わかりました!」
私は意識を集中させ、魔剣サファイアを目の前にかざした。
『凍りし世界に降り注げ、絶対の理を以て万物を封ぜん!』
サファイアの声に合わせ、私も力強く詠唱した。
「凍りし世界に降り注げ、絶対の理を以て万物を封ぜん!」
私たちの詠唱が重なり、体の中に眠っていた氷結の力が、まるで嵐のように強くなっていくのを肌で感じた。体中に力が駆け巡り、額に血管が浮き上がり、ドクドクと脈打つ。体から大量の冷気が発せられ、私の足元から地面を凍らせていく。
「氷結封絶!」
その言葉と同時に、私はサファイアの刀身を地面に突き刺した。
開放された氷結の力は、サファイアを伝い、一斉に森を凍らせていく。黒い粒子を包み込み、その侵食を止めるように、あたり一面が氷に覆われていく。私はその光景を見守りながら、さらに意識を集中させた。
『気を抜くなよ、カレン。あの黒い粒子の力は強大だ。少しでも油断すれば、お前の魔力ごと侵食されるぞ』
「はい、わかっています!」
先生がこの島に来ているのなら、先生ならきっと何とかしてくれる。
今の私にできることは、黒い粒子の侵食を止めること。
あとは、先生に任せる。
「っ!」
その時、頭に激しい痛みが走った。視界が一瞬ぐらりと揺れ、私は地面に片膝をついた。
『カレン! 大丈夫か?!』
頭の中で響くサファイアの焦った声に、私は荒い息を吐きながら答えた。
「はぁ……はぁ……大丈夫です」
これが、氷結の力。
意識を集中させていなければ、魔力に意識を乗っ取られてしまいそうだ。
まるで、自分の体が自分のものではないような感覚。
その圧倒的な力に押しつぶされそうになりながらも、私は必死に意識を保ち続ける。
ここで止めるわけにはいかない――
サファイアの柄を握る私の手は、魔力を開放した反動で、徐々に冷たさを増し、氷に覆われ始めていた。激しい痛みと、感覚が麻痺していくような感覚が、同時に私を襲う。
でも、今はそんなことどうでもよかった。
みんなを守るため、そして私を「道具」としてではなく、「私」として見て認めてくれたロキやサファイアのためにも、絶対にこの黒い粒子を止めてみせる。
この痛みが、その覚悟をより強くする。
そう決意を固めた時、私の左目から一筋の血が流れ落ち頬を伝った。
しかし私はそのことに気づく余裕もなく、ただひたすらに目の前の森を氷で覆い尽くすことに集中していた。


