「六月の岬に一番近いここが森人族の縄張り、東のここからこの場所までが兎人族の縄張り、西のここからこの場所までが狼人族の縄張りになっているわ。六月の岬に行くにしても、必ずこの三種族の縄張りを通り抜ける事は必須よ。だから、念入りに準備して行かないと」
テトの言葉に俺はびっくりして目を瞬かせた。
長いこと商人を言う仕事をしている人でも、三種族の縄張りがどこからどこまでなのか把握することは難しい。
しかしテトは迷う事なく、三種族の縄張りを言い当てた。
さすが、ソフィアの使い魔なだけあって持っている情報の幅広さに驚かされる。
「よくそんなこと知ってるな。俺でも三種族の縄張りがある事しか知らないのに、迷う事なくそれぞれの縄張り範囲を言えるだなんて、さすがだと言わざるを得ないよ」
「ふふっ。もっと褒めてくれてもいいのよ。これくらい分からなくて、ソフィアの使い魔なんて務まらいもの」
と言って、テトは胸を張ると嬉しそうに尻尾を左右に大きく揺らした。
でもこれ……ソフィアがよく使ってる地図なんだよな? 勝手に肉球なんて付けて、後で怒られないといいけど。
まぁ、怒られるのは俺じゃなくてテトだからいいけど。
しかしテトの知識は本当に助かる。
前だって、ソフィアを助けるために知恵を貸してくれた。
ある意味『ソフィアの使い魔になるには、これくらい知っておかないと』と言う言葉は、侮れないのかもしれない。
「それにどうせ行くなら、あの森で今何が起こっているのか、把握しておいても損はないと思うわ。私もそろそろ情報整理したり、更新しておきたかったから、ある意味いい機会かもしれないわね」
「えっ! お前たちも行くのか?」
「あら、当然じゃない。ソフィアを側で見張るって言ったのは、どこの誰かしら? それにムニンは狼人族よ。真夜中の森の中での道案内は彼にお願い出来るし、腕の立つ人間ならあの二人にお願いすればいいもの」
どうやらテトは行く気満々らしい。
確かに、このままソフィアを置いてここを離れるわけにはいかない。
依頼だって何日で帰って来れるかも分からないんだ。だったらいっそ、一緒に来てもらった方が良いのかもしれない。
「ねぇ、ムニン。あなたあの森で何が起こっているのか聞いているかしら?」
テトの問いかけに、ムニンが嫌そうに表情を歪めるとそっぽを向く。
「さぁな、僕が森を出たのはもう何十年も前だ。あの森で何が起こっているかなんて、僕には関係のないことだ」
ムニンは吐き捨てるように言うと、頭から下りて部屋から出て行ってしまった。
「ムニン……」
「あの子の事だから、密かに調べたりしているんだと思っていたけど。どうやら違ったようね」
「何か知っているのか?」
「さぁ? 知っていても私から教える事は出来ないわね」
「そう、だよな」
きっとムニンに聞いても、答えてくれはしないだろう。
俺とムニンはまだ、何でも話せるような関係じゃない。それにムニンにとって種族の話を振られることは、心底嫌がっているように見えた。
だから俺は、ムニンが話してくれるまで待つことにする。きっとムニンにとって、とても重要な事だろうから。
「とにかく、出発は二日後の夜ね。それまでにあの二人にも話しておいてね」
「あ、あぁ、分かったよ」
俺はもう一度ムニンが出て行った方を見つめた後、地図を折り畳んで立ち上がった。
テトの言葉に俺はびっくりして目を瞬かせた。
長いこと商人を言う仕事をしている人でも、三種族の縄張りがどこからどこまでなのか把握することは難しい。
しかしテトは迷う事なく、三種族の縄張りを言い当てた。
さすが、ソフィアの使い魔なだけあって持っている情報の幅広さに驚かされる。
「よくそんなこと知ってるな。俺でも三種族の縄張りがある事しか知らないのに、迷う事なくそれぞれの縄張り範囲を言えるだなんて、さすがだと言わざるを得ないよ」
「ふふっ。もっと褒めてくれてもいいのよ。これくらい分からなくて、ソフィアの使い魔なんて務まらいもの」
と言って、テトは胸を張ると嬉しそうに尻尾を左右に大きく揺らした。
でもこれ……ソフィアがよく使ってる地図なんだよな? 勝手に肉球なんて付けて、後で怒られないといいけど。
まぁ、怒られるのは俺じゃなくてテトだからいいけど。
しかしテトの知識は本当に助かる。
前だって、ソフィアを助けるために知恵を貸してくれた。
ある意味『ソフィアの使い魔になるには、これくらい知っておかないと』と言う言葉は、侮れないのかもしれない。
「それにどうせ行くなら、あの森で今何が起こっているのか、把握しておいても損はないと思うわ。私もそろそろ情報整理したり、更新しておきたかったから、ある意味いい機会かもしれないわね」
「えっ! お前たちも行くのか?」
「あら、当然じゃない。ソフィアを側で見張るって言ったのは、どこの誰かしら? それにムニンは狼人族よ。真夜中の森の中での道案内は彼にお願い出来るし、腕の立つ人間ならあの二人にお願いすればいいもの」
どうやらテトは行く気満々らしい。
確かに、このままソフィアを置いてここを離れるわけにはいかない。
依頼だって何日で帰って来れるかも分からないんだ。だったらいっそ、一緒に来てもらった方が良いのかもしれない。
「ねぇ、ムニン。あなたあの森で何が起こっているのか聞いているかしら?」
テトの問いかけに、ムニンが嫌そうに表情を歪めるとそっぽを向く。
「さぁな、僕が森を出たのはもう何十年も前だ。あの森で何が起こっているかなんて、僕には関係のないことだ」
ムニンは吐き捨てるように言うと、頭から下りて部屋から出て行ってしまった。
「ムニン……」
「あの子の事だから、密かに調べたりしているんだと思っていたけど。どうやら違ったようね」
「何か知っているのか?」
「さぁ? 知っていても私から教える事は出来ないわね」
「そう、だよな」
きっとムニンに聞いても、答えてくれはしないだろう。
俺とムニンはまだ、何でも話せるような関係じゃない。それにムニンにとって種族の話を振られることは、心底嫌がっているように見えた。
だから俺は、ムニンが話してくれるまで待つことにする。きっとムニンにとって、とても重要な事だろうから。
「とにかく、出発は二日後の夜ね。それまでにあの二人にも話しておいてね」
「あ、あぁ、分かったよ」
俺はもう一度ムニンが出て行った方を見つめた後、地図を折り畳んで立ち上がった。