俺は後悔に苛まれていた。悪いのは……全部、俺だ。

​そもそも、俺がソフィアをこの場所に連れてこなければ、こんなことにはならなかったはずだ。

ソフィアが傷つくことも、カレンたちが危険に巻き込まれることもなかった。

​「ザハラ、頭を上げてくれ。お前のせいじゃない」

​拳を固く握りしめ、言葉を絞り出す。

ザハラは戸惑うように顔を上げ、ゆっくりと椅子に座り直した。その瞳には、深い悲しみが宿っている。

​「ソフィアの傷が癒えるまで、どうかこの家でお過ごし下さい。その間、ソフィアも、あなた方も、私たちがお守り致します」

​「……ありがとう、助かるよ」

​短く礼を告げ、俺は立ち上がった。ドアを静かに閉め、ソフィアが眠る部屋へと向かう。

​ベッドの上で、ソフィアは静かに息をしていた。その頬にそっと触れると、まだ熱っぽい。いつ目が覚めるのか、見当もつかない。

​ザハラから聞いた話が頭の中を巡る。

竜人族は、魔人族の使徒。

それは、遠い昔に竜人族が仕えていた『光の巫女』と、魔人族の王であった『魔人王』が、互いに手を取り合い、約束を交わしたことに始まると言う。

​竜人族なら、魔人族の生態について何か知っているかもしれないと、淡い期待を抱いていた。

だが、ザハラの知識も限られているようで、その期待はあっけなく裏切られた。

​それでも、収穫はあった。

魔人族が使う特殊な魔力『共振(レゾナンス)』。

それはごく一部の魔人族にしか扱えず、完璧に使いこなせるのは、魔人王の血を引く者だけだと言う。

​ソフィアが共振を使えるということは、彼女は魔人王の血族だということになる。

​「魔人王と光の巫女……か」

​一体、二人はどんな存在だったのだろう。

互いに手を取り合ったというのなら、それは深い信頼で結ばれていたということか? 

さらに詳しく尋ねようとしたその時、ザハラは何かを拒むように、静かに首を横に振った。