あの戦いから五日後、俺はソフィアが眠る部屋を訪れた。

​部屋に入ると、テトの薬が効いているのだろう、ぐっすりと眠るソフィアの姿があった。その光景に安堵し、俺は彼女のベッドのそばにある椅子に腰を下ろした。

​ソフィアの容態は幾分か落ち着いてきたが、まだ油断はできなかった。

テトの薬で痛みは和らいでいるようだが、体の傷はまだ癒えていない。

普段ならとっくに治っているはずなのに、あの青髪の女性が魔人の力を封じ込めた反動のせいか、傷の治りが遅くなっていた。

だから彼女はまだ目を覚まさず、体の熱も引いていなかった。

​「あら、いたのね」

​すると、開け放たれた窓からテトがひょこりと顔を覗かせた。そのまま軽やかに床に着地し、俺のそばまで歩いてくる。

​「あなたの体は大丈夫なの?」

​「ああ、ヨルンが作ってくれた薬のおかげで、霧の毒はすっかり消えたさ」

​あの戦いの後、俺はソフィアの雫についてザハラに詳しく説明した。

一ヶ月前の世界の魔法の事件で、ソフィアの雫が器にされたこと。

そのせいで雫が不安定になり、魔力のコントロールがうまくできず、すぐに倒れてしまうこと。

​その話を聞き終えたザハラは、ひどく瞳を揺らしていた。

​「まさか……ソフィアの体がそのようなことになっていたとは」

​知らなくて当然だ。彼女が知るはずもないのだから。

​「それだと言うのに私は……私達の悲願のために、ソフィアを無理やり戦わせてしまいました。そのために……あなた方まで人質にしてしまい、まことに申し訳ございません」

​ザハラは体を震わせながら立ち上がると、俺に深々と頭を下げた。

​「私の考えは、あまりに愚かでした。このザハラ、心よりお詫び申し上げます」

​「ザハラ……」

​深々と頭を下げる彼女の姿に、俺は思わず目を逸らした。

今回のことは、ザハラのせいじゃない。

彼女は彼女なりに考えて、自分たちの悲願を果たすために行動しただけなのだから。