☆ ☆ ☆

​あの日のことは鮮明に覚えている。カレンがブラッドから受け取った魔剣サファイアの柄を握りしめた、あの瞬間を。その瞬間、カレンの周りを、まるで祝福するかのように無数の氷の結晶が舞い、私は心から実感した。

​「ああ、この子こそが私の唯一無二の存在なのだ」

と──

​初めて出会った頃の彼女は、まるで鳥籠に閉じ込められた小さな雛鳥だった。

ブラッドを初めて見た時も、彼女は彼のことをキラキラした瞳で見つめていた。

それはきっと、カレンにとって初めて自分を見つけてくれた王子様のように見えたのだろう。

​ブラッドは私との約束を果たしてくれた。彼のおかげで、私はカレンに出会えた。

​ブラッドは、カレンに魔剣の役割や、彼ら「守護者」の使命について、幼い彼女にも分かるように丁寧に説明していた。

カレンは真剣にその話を聞きながら、こう言った。

​「それが……私にしかできないことなのでしたら、私は精一杯やり遂げてみせます!」

​その瞳には、幼いながらも確固たる覚悟を持った強い光が宿っていた。

​ブラッドはカレンに氷結魔法と魔剣の使い方を指導していった。

本来なら、私が直接彼女に力を教えるべきだった。だが、私は彼女の気持ちに応えることを拒んだ。

​やっと見つけた、私にとっての唯一無二。カレンを失うことが、私は怖かったんだ。

​ブラッドに「どうしてカレンの願いに応えてあげないんだ?」と尋ねられた時、私は「カレンにはまだ、氷結の力を完璧に扱うことはできない」と、そう伝えてくれと頼んだ。

​まさかその言葉を、カレンは私の言葉ではなく、ブラッドが言った言葉だと思い込んでしまった。

それが引き金だったのだろう。カレンはそれ以降、より一層努力を重ねた。

​私に認められたくて、ブラッドに認められたくて、自分の居場所を失いたくなくて──

​それが、ここまでカレンを孤独にし、全てを一人で背負わせてしまった。

​だが、カレンの覚悟は私に痛いほど伝わってきていた。カレンが私を必要とし、私の力を欲し、必死に頑張っている姿を、私はずっと見ていたのだ。

カレンの覚悟、想い、願いに、私自身も応える時が来たのだ。

​大丈夫だ、カレン。

お前は一人じゃない。

お前には、お前を『ただのカレン』として見てくれる大切な人たちがいる。

そしてお前は、その事実にようやく気づくことができた。

だから私も応えよう。

今度こそ一緒に、あいつの力になるために。

そして、お前自身のために。