「同情なんかじゃねえよ！」

​ロキは私の両肩を掴み、真っ直ぐな瞳で力強く言い放った。

​「確かにお前は俺にとって目標であって、すごい奴だ。でもそれは、魔剣サファイアに選ばれたからでも、『氷結の魔道士』だからでも、『氷の女神の加護を受けし少女』だからでも何でもない。ただのカレンだからなんだよ！」

​「うっ……ろ、……き」

​「アレスやソフィアちゃんだってそうだ！ あいつらがお前のそばにいるのは、お前がカレンだからだよ！ 友達として隣にいてくれるんだ！」

​ロキの言葉に何度も頷きながら、アレスとソフィアの顔が脳裏に浮かんだ。

そうだ、みんなと一緒にいる時の私は、ただの普通のカレンでいられた。

友人として、一人の女の子として、彼らは私に接してくれていた。ロキだって、昔はそうだったのに。

​「それにお前の思いは、ちゃんとサファイアに届いているぞ」

​「えっ……？」

​その言葉に私は顔を上げ、優しく微笑むロキの顔を見つめた。

​「どうやら、ソフィアちゃんとザハラの戦いを止めたのが、氷結魔法を使っていた人らしいんだ。まさか魔剣が人の姿になれるなんて思わないけどさ、その人は確かにこう言っていたらしい。『カレンに頼まれたから』って」

​「……サファイア」

​私はサファイアに視線を送る。

しかし、刀身は静かに輝いているだけで、特に反応はない。私は目を細めて、じっとサファイアを見つめた。

​「……もし本当に私の思いが届いているなら、どうして何も言ってくれないんですか？」

​「カレンの思いは届いている、ってことなんじゃないか。言葉にしなくても伝わっているんだよ」

​ロキは私の頭をくしゃっと撫でた。

​「お前はもう、一人じゃないんだ。お前には俺たちがいる。だから、もう自分を責めるのはやめろ。な？」

​「……ロキ」

​「それに、お前がサファイアに認められる日だって、そう遠くはないはずだ」

​そう言って、彼は私に手を差し出す。私は震える手で涙を拭い、そっとその手を取った。

​「ありがとう、ロキ。ごめんなさい……ずっとあなたから逃げていて」

​「気にするな。俺は、お前がちゃんと俺と向き合ってくれた、それだけで十分だ」

​心からの笑顔を浮かべて、彼に微笑みかける。

そんな私の顔を見たロキは少し気恥ずかしくなったのか、頬を赤くして照れたように頬をポリポリ掻いていた。

そんなロキの姿が面白くて、私は軽く笑みを浮かべた。

​そんな私たちを見ていたサファイアの刀身が、一瞬だけ光輝いていたことを、私たちは知らなかった。

​そうだ、いつかサファイアに認められるためにも、今は頑張り続けるんだ。

今度こそサファイアに認められた時は、みんなを守るために力を振るってみせる。

そして、必ず自分の成すべき使命を果たすんだ。