「お前が魔剣の力を完全に扱えていないことも……俺は知っていたさ」

​その言葉に、私の全身が凍りついた。

反射的にロキの体を突き飛ばす。その勢いで、彼は数歩後ろに下がった。

私は体を震わせ、拳に力を込めた。

​「だから……同情したんですか?」

​「えっ?」

​目尻に涙を浮かべ、伏せていた顔を上げた私を見て、ロキは目を見開いた。

​「私の力になりたいとか言って、私がサファイアの力を扱えていないって知って、本当は影で笑っていたんでしょう!」

​「そ、そんなことするわけないだろ! 俺にとってお前は昔から──」

​「目標の存在なんでしょう! あなたが言わなくても、ちゃんと分かっているんですよ!」

​ポロポロと頬を伝う涙を拭いもせず、私は視線を床に落とした。

​「『氷結の魔道士』、『氷の女神の加護を受けし少女』、そしてあなたにとって私は目標の存在……そんなこと、言われなくても分かっています! だから私は、みんなが理想とする存在、求められる存在になれるように必死に頑張ってきた! でも……それでもサファイアは私の思いに応えてくれない! どんなに努力しても、私は認められない! この場所だって、サファイアの主だからって理由でもらったものなんです……。私の本当の居場所なんて存在しない! あなたが目標としている私は、どこにもいないのよ!」

​「……カレン」

​頭の中がぐちゃぐちゃだった。自分が言っていることが、ただの八つ当たりにすぎないことなんて、痛いほど分かっていた。

​「ほら、またそうやって……一人で泣くんじゃないかよ」

​「泣いて何が悪いんですか! 一人で泣くことの何がいけないんですか! 一人でいる方がマシだって、どうして分かってくれな……」

​顔を上げてロキに叫んだその時、私は再び彼の腕の中にいた。

私の言葉を遮るように、ロキの人差し指が、私の唇をそっと塞いだのだ。

​「……んっ!」

​突然のことに息をのむ。彼の指が触れた瞬間、私の言葉は止まった。

​「一人でいる方がマシだなんて言うな。一人でいて平気な奴なんて、いるわけないだろ!」

​ロキは指を離すと、私を強く抱きしめた。

​「俺は、お前が誰にも頼らないで一人でいるのが、一番嫌なんだ」

​「でも……」

​「言い訳は聞かない。これからはもう容赦しない! お前が『来るな』って言っても、どこまでも付きまとってやる! お前が泣いている時はそばで涙を拭ってやる! 弱音を隣で聞いてやる! 怒っている時は愚痴を聞いてやる! 悩んでいる時は力になってやる!」

​ロキの言葉に、私の頬を涙がボロボロとこぼれ落ちた。ロキは私の背中を優しくさすり、血がにじんでいる私の手をそっと包み込んでくれる。

​「俺が何のために今まで頑張ってきたと思っているんだ。俺はずっと、お前の力になりたくて頑張ってきたんだ。お前が俺を避けていた時期も、俺はずっとお前を見ていた」

​その言葉が胸に響き、私はロキの胸に顔を埋め、声を上げて泣いた。