俺は、今まで身を隠すようにかぶっていたフードを乱暴に脱ぎ捨てた。
視界が広がり、目の前にそびえる巨大な石造りの扉が、その威圧感をむき出しにする。
腰から下げていた一本の剣を、静かに鞘から抜き放つ。
そして、長年右目を覆っていた包帯を、ためらいもなく解き放った。
風が頬をかすめ、右目の奥に隠されたもう一つの力が解き放たれる。
ゆっくりと見開いた右の瞳は、これまでの紅色とは似ても似つかない、海のように深く、澄み切った碧眼へとその色を変えた。
それは、かつて俺が過ごした故郷の空の色であり、大切な人の瞳の色でもあった。
俺はその碧い瞳と、手の中にある剣に、ありったけの魔力を注ぎ込んでいく。
「急がないとな」
俺の口からこぼれた言葉は、誰に聞かせるわけでもなく、自分自身に言い聞かせているようだった。
魔力を帯びた剣の切っ先を、目の前の大扉に刻まれた複雑な魔法陣へと軽く突き当てる。
すると、俺の魔力が吸い込まれるように扉へと流れ込み、魔法陣が淡く、しかし力強い光を放ち始めた。
『本当に、この先にいると言うのですか?』
頭の中に、優しくも確固たる女性の声が響き渡る。
その言葉に、俺はかすかに笑みを浮かべた。
「ああ、必ずいるはずだ。そして今回の事件は、その者でなければ決して解決へと導くことはできない」
確信に満ちた俺の言葉に、声は静かに応えた。
『間に合うといいけどな』
「……ああ」
轟音を立ててゆっくりと開かれていく大扉を見上げながら、俺は脳裏に蘇る過去の光景を抑えきれなかった。
初めて経験した、家族の死。
その時に俺は、何もできなかった。
ただ、目の前で命が消えていくのを、無力なまま見ていることしかできなかったのだ。
その後に続いたのは、後悔と自責の念に苛まれる日々。
なぜあの時、もっと早く気づけなかったのか。なぜ、もっと早く動けなかったのか。
そのたびに、救えたはずの命が、俺の手からこぼれ落ちていった。
ザハラたちが暮らす村の情景が、鮮明に脳裏に蘇る。
笑顔で暮らす村人たち、そして未来への希望を胸に抱く子供たち。その全てが、今まさに危機に瀕している。
「急がないと、この島で間もなく……殺し合いが始まる」
もう、手遅れにはさせない。間に合わなかったなんて、二度と嘆きたくない。
「もう、後悔はうんざりだ……!」
そう決意した瞬間、脳裏に白銀の髪をなびかせた、懐かしい彼女の後ろ姿が浮かんだ。
そして彼女との、大切な約束──
「絶対に、約束は……守るから」
完全に開かれた大扉の向こうに広がるのは、まばゆい光の世界。
しかし、俺にはその光の奥に、この島の未来が待っているのが見えた。
俺は迷うことなくその光の中へと足を踏み入れ、その姿は一瞬にして消え去った。
俺の決意を乗せた碧い瞳は、決して揺らぐことはなかった。
視界が広がり、目の前にそびえる巨大な石造りの扉が、その威圧感をむき出しにする。
腰から下げていた一本の剣を、静かに鞘から抜き放つ。
そして、長年右目を覆っていた包帯を、ためらいもなく解き放った。
風が頬をかすめ、右目の奥に隠されたもう一つの力が解き放たれる。
ゆっくりと見開いた右の瞳は、これまでの紅色とは似ても似つかない、海のように深く、澄み切った碧眼へとその色を変えた。
それは、かつて俺が過ごした故郷の空の色であり、大切な人の瞳の色でもあった。
俺はその碧い瞳と、手の中にある剣に、ありったけの魔力を注ぎ込んでいく。
「急がないとな」
俺の口からこぼれた言葉は、誰に聞かせるわけでもなく、自分自身に言い聞かせているようだった。
魔力を帯びた剣の切っ先を、目の前の大扉に刻まれた複雑な魔法陣へと軽く突き当てる。
すると、俺の魔力が吸い込まれるように扉へと流れ込み、魔法陣が淡く、しかし力強い光を放ち始めた。
『本当に、この先にいると言うのですか?』
頭の中に、優しくも確固たる女性の声が響き渡る。
その言葉に、俺はかすかに笑みを浮かべた。
「ああ、必ずいるはずだ。そして今回の事件は、その者でなければ決して解決へと導くことはできない」
確信に満ちた俺の言葉に、声は静かに応えた。
『間に合うといいけどな』
「……ああ」
轟音を立ててゆっくりと開かれていく大扉を見上げながら、俺は脳裏に蘇る過去の光景を抑えきれなかった。
初めて経験した、家族の死。
その時に俺は、何もできなかった。
ただ、目の前で命が消えていくのを、無力なまま見ていることしかできなかったのだ。
その後に続いたのは、後悔と自責の念に苛まれる日々。
なぜあの時、もっと早く気づけなかったのか。なぜ、もっと早く動けなかったのか。
そのたびに、救えたはずの命が、俺の手からこぼれ落ちていった。
ザハラたちが暮らす村の情景が、鮮明に脳裏に蘇る。
笑顔で暮らす村人たち、そして未来への希望を胸に抱く子供たち。その全てが、今まさに危機に瀕している。
「急がないと、この島で間もなく……殺し合いが始まる」
もう、手遅れにはさせない。間に合わなかったなんて、二度と嘆きたくない。
「もう、後悔はうんざりだ……!」
そう決意した瞬間、脳裏に白銀の髪をなびかせた、懐かしい彼女の後ろ姿が浮かんだ。
そして彼女との、大切な約束──
「絶対に、約束は……守るから」
完全に開かれた大扉の向こうに広がるのは、まばゆい光の世界。
しかし、俺にはその光の奥に、この島の未来が待っているのが見えた。
俺は迷うことなくその光の中へと足を踏み入れ、その姿は一瞬にして消え去った。
俺の決意を乗せた碧い瞳は、決して揺らぐことはなかった。


