「それは後でやるから安心してくれ」

テトにそう言いながらソフィアに目を戻す。

あの日から魔人の彼女は表に出てきていない。

ソフィアの雫が不安定なせいなのか、それともあの戦いで魔力を消耗しすぎて、疲れて眠っているのか。

どちらにしても今出て来てもらっては困る。

今のソフィアに魔人化した彼女の力は、体への負担が大きすぎる。

何が起こるか分からないんだ。

「そうだ、ムニン。お前が咥えているその手紙はなんだ?」

「お前宛に手紙だ」

「手紙? 誰からだ?」

ムニンから手紙を受け取って、表裏を確認してみる。

しかし差出人の名前は見当たらず、手紙の封筒に『アレス様へ』と一言書き記されていただけだった。

「ラブレターか何かじゃない?」

「そんなわけないだろ?」

女の子にモテる自覚はあるけど、ラブレターとかは一通も貰った事がない。

告白だってされたことないんだ。

だからこの手紙はきっと――