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 正直、パラボラアンテナとかどうでもいいって思ってた。

 桜が見ごろっていうのがいいなってくらいで、だけど地元もちょうど満開から終わりかけぐらいだから、そこもそんなにポイント高いって程でもなくて。


「…南十字星とは、1つの星ではなく1等星アクルックスを含めた5つの星からなる星座で、昔の人はこの星座を方角の目印にして航海などをしていました。この星座は…」


 私たちは校外授業で隣県に来ている。大学の研究施設でプラネタリウム上映と宇宙の話を聞いて(後半寝てた)今から巨大パラボラアンテナを見学するところ。


「なぁなぁ、もう少しあっち行くと、海があるんだろ?」
「はぁー。せっかくここまで来たんだから海のほうがいいよなぁ」
「だよなぁ。はーダルい」
「こらそこ!貴様ら何を騒いどる!うるさいぞ!」


 アホ男子たちがいつもと同じくふざけていたら、学年主任の田村が怒鳴り声をあげた。このご時世、下手したら保護者から問題にされそうな口の悪いオッサン先生。先生の声の方がよっぽどウルサイ。

 あたしも海が良かったな。うちは海なし県だから、男子がはしゃぐのも無理はない。


「はーい、二列に並んでよく聞いて! 今から特別に天文台の上まで見学させていただきます! 職員の方の指示に従って、順番に入ること!」


 だけどそういえば、パラボラアンテナのこと、天文台っていうの初めて知った。今まで衛星放送とかGPSのアンテナ、くらいにしか思ってなかったから。

 それに、天文台といったら、覗いて星が見える天体望遠鏡の凄いバージョンのことだと思ってたし。パラボラアンテナではその望遠鏡で見えないものも見えるらしい。電波天文学、とかなんとか。どっちにしてもあたしには関係ないことだなと思った。