「今はネットの時代ですからね」

 店長がにこやかに微笑む。

 じかに足を運ぶより、通販で画面をクリックする方が早いのは事実だ。特に高級腕時計を欲しがる層は、インターネットも詳しい。彼らは全国各地の相場を調べ尽くし、最も手頃な店で注文するからだ。高い買い物なればこそ、金銭の妥協は一切ない。

「風師さん、おかげでロレックスはほぼ完売となりました。残るはあれのみです」

 店長はショー・ケースを一瞥した。

 ロレックスの棚は『エクスプローラー』をいくつか残すだけとなった。

 売れ筋なので大量に在庫を確保した結果、かろうじて持ちこたえた格好だ。

「いつ売り切れてもおかしくありません。例の女性客がお買い求めにいらっしゃるまで、持つかどうか判りませんよ」

「き、緊張しますねっ」ごくりと息を呑む時花。「しかも、あれはまさにエクスプローラー214270じゃないですかっ。これはもう運命的――」


「こんばんは! まだ在庫ある!?」


 ――来た!