時花の個性(ドジ)がこんな形で影響を与えるとは、予想だにしなかった。

 もはや彼女は、こうした狂言回しを担う運命なのかと割り切るしかない。

「はうぅ、そこまで直截的(ストレート)に言わなくても良いじゃないですかっ。私も困ってるんですよっ……?」

「このメールは間違いなくあの青年客です。天然ボケかつポヤッとした風師さんの姿は、ナンパ師には引っかけやすい(かも)だったのでしょう」

「む、むぅ……何だかひどい言われようです」

 時花はしゅんと肩を落とした。

 しかし自分がドジで隙だらけなのは本当だから、言い返せない。店長にすがったまま離れられず、上目遣いで店長の顔を覗き込んだ。

 店長はメール・ボックスを閉じ、ひとまず返信は保留にしておく。

「青年客の本性を暴くことが出来ました。この点においては、ドジな風師さんのお手柄と言えますね」

「……褒めてませんよね、それ?」

 ドジが手柄になる、なんてことがあるのだろうか。

 第一、何の役に立ったと言うのか。

 青年客の本性が何に影響するのだろう?