確かに店長は、こう述べていた。


 ――『彼が初めて来店なされたのは半年前です。当時は別の女性が同伴していましたが……』――


 それはつまり、数ヶ月ごとに女をとっかえひっかえしている証ではなかろうか。

 時花はこれを聞いた当初、たまたま半年間で交際相手が変わっただけだろうと考えたのだが、どうやら違うようだ。

(ど、どうしましょう……とりあえずこのメールに返信するのは、気が引けますね……)

 メールのやりとりは彼女に与えられた職務だが、こんな私欲まみれのナンパメールに応対するマニュアルはない。むしろ店員へのセクハラなので無視するのが妥当だが、相手が常連客というのが引っかかった。

 お得意様をぞんざいに扱ったら、売り上げが減りそうだ。もしくは、客側が逆上して執拗に付きまとわれるかも知れない。さまざまな危惧が頭の中を駆け巡った。

「風師さん、どうしました? また手がお留守になっていますよ」

「……店長!」

 いつの間にか、店長が事務室へ戻っていた。