3.
時花の予想は、ほぼ正解だった。
あの青年客はとんでもないプレイボーイだ。
歯の浮くような口説き文句がメールに踊っている。あの手この手で時花を誘い出すべく美辞麗句がのたくっていた。
二人きりで出かけたいとか、食事したいとか、何ならクリスマスを時花のために空けておいても良いとまで記されていた日には、とうとう嗤笑すら引っ込んで、ひたすら呆れ果てるしかない。
(今の恋人が可哀相です……)
午前中、カップルとして連れ歩いていた女性客に、時花は憐憫を禁じ得ない。
彼女と過ごすであろうクリスマスの予定を反故にしてまで、時花に乗り換えようとする男など信用できないし、まともな神経の持ち主とも思えない。
(そう言えば、店長もおっしゃられてましたっけ……あの青年客って、以前は違う女性と一緒に来店してたとか何とか……)
時花は店長の一言一句を心に刻み込んでいる。一挙手一投足さえ見逃さない構えだ。それはそれで時花のストーカーじみた勤務態度に問題があれども、今は棚上げしておく。