時花は及び腰になった。
軽率なナンパ野郎は、時花の好みではない。店長のような実直で物腰柔らかな男性に憧れるのだ。この青年客はそれとは正反対だった。はっきり言って眼中にない。恋人が居るのに他の女へ手を出すなど、もってのほかだ。
『今度、二人きりで会いませんか? あ、今のカノジョには内緒でお願いしますね』
「うわ……」
思わず反吐が出そうになる。
面倒臭い手合いに目を付けられたなぁと身震いすると同時に、これが青年客の本性なのかと落胆もした。
(もしかして、この人って……相当な女タラシなのでは……?)
一つの仮説が、時花の中に芽生えつつあった。
謎めくカップルの正体に一歩、近付けた気がした。
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