そのメール・アドレスは、通販サイトに会員登録されているものだった。一度限りの顧客はいちいち登録などしないから、それなりの常連客ということになる。
購入履歴を見ると、ここ数ヶ月で何度も買い物をしているお得意様だった。
中でもロレックスを重点的に買い込んでいる。
マウスで画面をスクロールすると、メールの文面には続きがあった。
『俺の買った時計はまだ故障してないけど、無料ならメンテしてもらおうかな。
ていうかこのメール書いた人、いつもの店長じゃないですよね?』
「あっ、気付かれてますね」
常連客ならば何度もメール交換をしているだろうから、文体ですぐ判るのだろう。それを察知した客は、時花のことを探ろうとして返信内容が馴れ馴れしくなっていた。
『最後の一言が普段と違うから、すぐ判りましたよ! もしかして今朝、店の前で掃除してた女の人ですか? 楚々として可愛らしい、線の細い店員さん!』
――面が割れていた。