時花は自分のことのように嬉しかった。

 店こそ小規模だが堅実に業績を伸ばし、ネット通販まで開設し、時花という従業員の補充まで達成した。このまま上り調子で末永く勤務したいものだ。

「じゃあ私、さっそくメールしますっ。購入者リストから宛名(メアド)を選択して……と。メンテナンスの案内文って、テンプレートはありますか?」

「過去の僕の送信メールを参考にして下さい。ただのテンプレだけでなく、お客様に即した追伸やアドリブも添えておくと、より一層親近感を持たれますよ」

「追伸ですか? でも私、お客様と会ったこともないのに何を書けば良いのやら」

「お客様が購入なされたブランドを参照に、このモデルの新作が出ましたよとか、その後の様子はいかがですかとか、さり気ない一言で構いません。要は、店側がお客様のことを気にかけていると印象付けることで、リピーターの足掛かりにするのです」

 それもまた商売繁盛のテクニックというわけだ。

 時花は店長の案内文をコピー&ペーストし、文末を自分風に書き替えて送信した。

「上出来ですよ、風師さん。その調子で本日分の案内メールをしたためて下さい」

「かしこまりましたっ」

「僕はその間、店頭で接客に当たります。レジを無人にするのは心許ありませんからね」

 店長は和やかにことづけると、部屋を出て行った。