「やっぱりお得意様なんですね!」箒でゴミを集め直す時花。「あの青年、うちで買った腕時計を装備してるとおっしゃってました!」
「ええ。当店がネット通販を始めて以降、定期的にお買い上げしていただいています」
「ご縁の深い方なんですね……!」
「彼が初めて来店なされたのは半年前です。当時は別の女性が同伴していましたが……」
店長は腕組みして回想した。時花がなぜか取り繕う。
「ま、まぁ半年もあれば元カノと別れて、新しい彼女と交際を始めることもありますよ」
「それにつけても羽振りの良い令息です。今の彼女は偽物だらけですが、そこを指摘しないのは彼なりの優しさでしょうか。いっそ彼が本物を買い与えれば良いものを」
言われてみれば、そうだ。金持ちの彼氏なら、彼女に本物をプレゼントしないのか?
「店長。女性客は見栄を張ってるんですよね? 青年はエリート大学生のようですし、それに見合うためには女性側も粉飾しないといけなかったとか……」
「なるほど、クジャクの羽根を借りたカラスの童話さながらですね」
店長は感心したように呟いた。
その例が適切なのか時花には図りあぐねたが、とにかく女性客が彼氏と対等で居るために偽物をそろえたのは真実だろう。
「何か、裏がありそうですね……?」
時花は言葉を濁した。