2.
「はわわ、今日は準備が遅れ気味ですね……もう午前十時、開店時刻じゃないですかっ」
時花は翌朝も開店準備に追われていた。
遅れ気味と述べているが、いつものことだ。ドジでのろまで鈍臭い彼女が時間通りに作業をこなせたことは、あんまりない。
出勤の電車に乗り遅れ、寒さで歩行も鈍り、更衣室で服を着替えるのも億劫だった。店内の清掃もクリスマスの装飾を壊さぬよう慎重にこなすと、輪をかけて手間がかかった。
当然、これでは店長と足並みがそろわない。
店長はアルマーニのスーツを一糸乱れず着こなし、自分の持ち場を片付けていた。ついでに事務室で在庫確認を済ませ、今日の業務に向けたレジスターの準備も万端だ。
「風師さん、まだ終わっていない作業はどこですか?」
問いただす店長の笑中はいかばかりか。ちょっと怖い。
「あ、あとは外の掃除だけです! 冬は特に、枯れ葉が散らかってるんですよねっ」
「では掃除をお願いします。何、心配はいりませんよ。今日は平日ですし、開店早々いきなりお客様が殺到することもありませんから、ゆっくり行きましょう」
店長は朗らかにのたまう。