肩透かしを喰らった気分だ。
どうしますか、と店長に目配せした。
遠巻きに眺めていた店長は、肩をすくめながら苦笑する。店の規則に従ってご説明さしあげろ、と暗に語っている。時花には判る。好きな人の指示だから伝わる。
「取り置きの場合ですと、代金の一割以上を前金として頂戴することになっております」
「前金は嫌よ、他の店で買うことになったらキャンセルしなくちゃいけないし」
「そうなりますと――」
「何よ、ケチね。まぁいいわ、他を回ってみて、ここが一番だったらまた来るから」
女性客はそそくさと体を反転させた。
一直線に店を去る。ドアベルが虚しく鳴った。耳障りな残響が店内に沈殿する。
「店長、今のって……」
「恐らく本当でしょう。よそを見て回って、最も安い店で買うつもりのようです――が」
泣き付く時花をなだめた店長は、屋外を遠く眺めた。
回転扉のガラス越しに透けて見える女性客の後ろ姿が、みるみる小さくなる。
「が、しかし――彼女の洋装に関しては、偽りだらけでしたね」
「えっ?」
時花は眉をひそめた。