(これは感謝の気持ちであって、まだその、こ、告白とかではないですけど……!)
どうでもいい言い訳を脳内で口走りつつ、時花は顔を真っ赤にして帰宅した。
いつしか人混みも気にならなくなり、軽やかなスキップを刻んでいた。
*
明くる朝は曇天だった。
「おはようございます店長っ、すっかりクリスマス一色ですね!」
「やぁ風師さん、おはようございます」
出勤した事務室では、店長がクリスマス用の装飾品を入荷していた。
日に日にクリスマスのムードが高まる中、時計店も内装を一新するようだ。
雰囲気作りは大事である。クリスマス・ツリーのレプリカに始まり、電飾を張り巡らせたり、サンタクロースのオブジェを並べたりと、聖夜に向けた演出を心がける。
店内の間接照明も明度を落とし、カラー・セロハンをかぶせるなどして、店の色合いをムーディに一変させた。ろうそくを灯してショー・ケースの横に置くのも小粋だ。ケース内の腕時計が、幻想的に炎を照り返す。
「開店までに飾り付けを終えましょう」