だから時花も安心して紛れ込める。万が一ここが男性客だらけの空間だったら、女性一人では居づらくてクリスマス・プレゼントどころではなかっただろう。
(まさか私が、クリスマスで悩む羽目になるなんて……)
十二月中旬を過ぎると、街は聖夜一色になる。
誰が決めたわけでもないが、日本には縁のないキリストの誕生日をこぞって祝い、家族や友人、大切な恋人などへ感謝の贈り物を渡す風習が浸透している。
時花はあまり歓迎したくない行事だが――生まれてこの方、恋人が居た試しがない――今月は事情が異なっていた。
(時任店長……♪)
時花は、愛しの店主を思い浮かべ、一人でにやつく。
時任刻。
二九歳の男性で、時花を雇い入れた上司である。
たぶん恋人は居ない……と、思う。プライベートな会話をしないため不明だが、女性の影は一切見ないのでフリーだと勝手に解釈している。でなければ、時花はショックのあまり再びヒキコモリへ逆戻りしかねない。
ニートだった時花を拾い上げた店長は、愛しのヒーローであり、救世主なのだ。
ならば、感謝の贈り物を献上したくなるのが人情である。