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「むむむっ……店長へのクリスマス・プレゼント、何を買えば良いのか迷っちゃいますね……うーん……」

 風師(かざし)時花(ときか)はデパートにぽつねんと一人、立ち尽くしていた。

 繁華街へ繰り出した彼女は、それだけで頼りない小動物と化す。あっちへふらふら、こっちへふらふら、所在なげに道をうろついたのち、一軒の総合百貨店に辿り着いた。

 ただでさえ華奢で青白く、危なっかしい外見である。ヒキコモリだった時花にとって、街の人混みはどうにも心許ない。

 ごった返す客足に圧倒され、人波に流され、目的地を見失うのは避けられなかった。

 当年とって二三歳にもなる大人が、デパートで迷子になる……という、ある意味で天才的なドジを発揮するのも、一種の個性と言えようか。

「さすがにクリスマス商戦の時期ともなると、混雑が凄まじいですね……」

 どうにか人垣を掻き分け、時花は紳士服売り場に到着した。

 奥には雑貨売り場も見通せる。

 男性用品という割に、行き交う客はほとんどが女性だ。お歳を召した方が多い。恐らく主婦が、旦那や息子へプレゼントを買いに訪れていると思われた。