(まずいです、ドキドキして来ました……はぅ、息が苦しいっ。深呼吸、深呼吸……)

 玄関の前で、いつまでも外への一歩を踏み出せずに居た。

「何やっとんだ時花! とっとと行かんか!」

「わぁ、お父さん!」

 怒鳴られてしまう。

 父が廊下をけたたましく歩いて来た。時花の華奢な背中をてのひらで叩く。

「数ヶ月ぶりの外出を決意したんだろ? 俺は娘がようやく行動を起こしたことを誇りに思っとる! 死んだ母さんも草葉の陰で応援しているに違いない!」

「お父さん……」

「前職の失敗でニートになったお前が、再び就職活動を始めた。言い方は悪いが、駄目で元々だ! 失うものなんかない! むしろニートが勇気を出したという事実は残る! その経験は本物だ! それを積み重ねれば、ニートもいつか再就職できる!」

「う、うん、そうですね……あんまりニートニート連呼しないで欲しいですけど……」

 時花は頭を下げ、持ち上げたときには心機一転、ピンヒールに足を通して玄関を出た。

 歩きにくい。