「俺さ、反省したんだよ。時計を壊したせいで、親父は気力を失ってくたばった……もともと病死する運命だったとしても、その死期を早めたのは俺なんだ! 俺が悪いんだ!」
だから罪滅ぼしがしたいんだ、と彼は呟いた。
せめてもの謝罪として、記念日である七月二〇日に時計を供えなければ気が済まないのだ。
「今は親父の遺産や生命保険で何とか食ってるが、まだまだ火の車でさ。おふくろも必死に働いてる。俺だって学業の傍らバイトしてる。なかなか金は貯まらないけど、どうしても欲しいんだよ。二六四万円もするアホみたいな時計が……!」
いつしか学生は、声がかすれていた。
自省し、後悔し、改悛し、嗚咽を漏らさずに居られない。過去は覆せない。どうしようもない状況で、それでもどうにかしたいと願って、今日を生きている。罪の十字架を背負い、今なお押し潰されそうになりながら。
時花は店長の手を握った。
何とかしてあげたいと目で訴えた。
店長は相変わらず顰笑のままだったが、やがて時花の手を握り返す。
温かく、大きく、包み込むような手触りだった。
「仕方ないですねぇ」
「店長! それじゃあ――」