店長は時花へ向き直り、かと思えば再び学生と正対したりと、くるくると姿勢を変えながら講釈した。
あたかも衒学的に。知識を啓蒙するように。
「七月二〇日は、お客様の親御さんのお誕生日……恐らくお父上かと思われます。ゆえにあなたは、同じ日を記念したスピードマスターを購入しようと躍起になったのでしょう」
二つの記念日が、偶然にも一致していたのだ。
「親父ってことまで見抜けるのかよ!」
「オメガは男性用の腕時計ですから」片目をつぶる店長。「きっとお父上自身が、大の宇宙マニアではありませんか? ご自分のお誕生日がアポロ十一号の月面着陸と重なっていることを知り、調べるうちにオメガの腕時計と巡り会ったのです――」
「ああ、そうさ」鼻を鳴らす学生。「何せ親父は、JAXAの従業員だったからな」
「ほう、JAXA! 日本のNASAみたいなものですね」
「JAXAの本拠は種子島(たねがしま)だが、東京の調布に出張事務所がある。そこで働いてたんだ」
JAXA――宇宙航空開発機構。
日本における宇宙関連の研究事業を一手に担っている機関である。
「いやはや素晴らしいお話でございます。宇宙好きが高じて、本当にその筋へ就職したのですね。ご立派な方ではありませんか。夢を叶えたようなものでしょうし」
「もう死んだけどな!」
「え」