「買い直して……弁償する……」
思わぬ天啓が降り注いだ気がした。
人が本気で買いたい品というのは、得てしてそういうものなのかも知れない。
*
翌朝は、良く晴れた一日となった。
冬はもともと雨が少ない。乾いた空気と肌を刺す寒風が横行し、燦々と照らす太陽の熱など気休めにもならない。
吐く息は白く、路面に降りた霜が靴底を滑らせた。時花が思いっきり転んだのは言うまでもない。ドジは健在である。
外気との温度差で結露した店舗のショー・ウィンドウを、雑巾で拭く。時花は開店前の掃除を全力で終わらせた。
「はぁ、そろそろ開店時間ですね……あの学生は来るでしょうか?」
時花は店の外を見やった。
――居た。
学生は店の前を通りがかったかと思うと、ガラス越しに店内を凝視したのだ。