時花はわけが判らなかった。

 店長はときどき奇抜な言動をする。時花には及びも付かない思考回路と行動理念を有するため、底の知れない人物像という認識が強い。

「ふふふ、謎が解けましたよ。全て繋がりました」

 ようやく店長が唇を動かす。

 それは時花の疑問を解消するための、日常の謎解きでもあった。

「そのお客様は、近いうちに再来するでしょう。スピードマスターが自分以外の誰かに買われやしないか気になって、ね……そのときが答え合わせです。時計にまつわる謎を解きほぐして見せますよ。それが古物時計店『時ほぐし』の信条ですから」

「何か判ったんですか、店長?」

()計のことならお()せを。それが時任(・・)刻のモットーです」

 駄目だ。人の話を聞いていない。

 高級腕時計オメガを欲しがる学生と、どう折り合いを付けるのか――?

 時花は店長の解答を待ちわびるしかなかった。



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