しかし、七月と言えば今から半年以上も先ではないか。現在は初冬、季節がまるで正反対だ。取り置きするにしても期間が長すぎる。
「あのぅ、お客様」申し訳なさそうに進言する時花。「どうしても欲しいのであれば、ローンを組むことも可能でございます。クレジットカードをご提示していただければ――」
「俺、まだ学生でさ。家の事情で一度スマホ代を滞納しちまったせいで信用情報がなくてクレカ作れないし、ローンも組めないんだ」
「……あー」
時花は危うく脱力しかけた。
男性客は二〇歳そこそこの若者だ。家の事情で滞納ということは、貧困家庭なのか?
(なぜそんな家庭の人が、一九六九年の値打ちモノを欲しがるんでしょう?)
時花には見当も付かなかった。
とにかく、無理なものは無理だと断るしかない。
「申し訳ありません。前金の払えないお客様には、商品の取り置きは出来かねます……」
「何だって! 畜生!」頭を掻き乱す客。「いくらか負けてもらえないか?」
「値段交渉はご遠慮いただいでおります……」
「チッ! バイト代と貯金をはたいても全然手が届かないじゃんか。何だよ二六四万円って……クルマが買えるじゃん……」