(ひとまず普通に店番しつつ、暇なときはお掃除やレイアウトを直せば良さそうですね)

 時花は自分に言い聞かせた。

 レジに立つ日もあれば、事務室でひたすら経理を任される日もあった。現場と裏方を満遍なく覚えることで、一人前の従業員として育成されて行くのだろう。

 インターネット通販も、いずれ教わるに違いない。落ち着いた店構えだが、やることは多かった。時花はやりがいを感じ始めた。

 ――カランコロン。

 ドアベルが鳴る。

「!」

 来客だ。

 入口の回転扉をくぐる第三者の姿があった。

「へぇ! こんな所に時計店があったとはな!」

 客は軽薄そうな二〇歳(はたち)前後の男性だった。

 店内を眺め回しては、雰囲気を見定めようとしている。

「いらっしゃいませ」

 とりあえず挨拶だけは欠かさずやっておく。高級品を扱う手前、お辞儀は大切な要素の一つだ。