見てみたい。まだプライベートに首を突っ込める仲ではないけど、いずれ見たい。
「往々にして、その手の窃盗犯は、自分の所有欲ではなく『誰かのため』に盗もうと自己正当化する傾向が顕著です。前述した窃盗未遂も、祖父の宝物を取り戻すためという犯行動機を打ち明けていたでしょう?」
「あ~、喋ってましたね……」
「金目の物は執着も強くなり、犯罪を誘発するのです。なので、充分な注意をお願いしますね。もちろん表には出さず、接客は飽くまでにこやかに」
「承知しましたっ」
またもや敬礼する時花であった。
店長は大真面目な彼女に満足したのか、そそくさと事務室へ引っ込もうとする。
「それでは、僕は書類と通販を処理したいので、風師さんは接客と清掃をお願いします。平日昼間はさほど客足が伸びませんから、余裕を持って出来ると思います。万が一判らないことがあったり、質入れのお客様がご来店したりした場合は、僕を呼んで下さい」
「はい!」
前述もしたが、質入れは店長の領分だから、呼ばないと話にならない。
時花には高級腕時計の買い取り価格など鑑定できないし、相場すら知らないのだ。買い取りだけで何十~何百万円もの現金が動くと思うと、とても怖くて扱えない。