「……と言っても私、出来れば犯罪現場には出くわしたくないですけど……」
「あいにく、うちのような小さい店は泥棒も狙いやすいようです。実際は個人経営ほど自衛のためにセキュリティを強化しているのですが、ね」
「へぇ~……」
「これをご覧ください」
店長は店内に仕掛けた防犯カメラの数々を、一つ一つ指差して回った。
時花は、その多さに目を剥いた。レジ周りだけで三つ、店の入口と裏口、各ショー・ケースを前後左右から見張る小型カメラが一つずつ……と、両手では足りない物量だ。
「さらに防犯ブザーや、警備会社との契約による自衛グッズも用意されています。馬鹿にならない保守費用がかかっていますね。盗難保険の加入も抜かりありません」
「ほぇ~……大変なんですね」
「高価な品物は、常に窃盗と隣合わせです。僕自身も店の二階に住み込んで、有事の際はいつでも駆け付けられるようにしています」
「え! 店長のお住まいって、この上なんですか!」
「はい。何ぶん小さな店なので、二階もワンルームに毛が生えたようなものですが」
時花の興味は店長の住居へ向いてしまった。
この上階に、店長の寝床があるのか。