(でも、ヘマして店長に叱られるのもまた、楽しいです。店長と会話すること自体が、私の幸せなんです……もしくは、ちょっとマゾに目覚めちゃったのかも知れませんね!)
要するに、ファンなのだ。
仕事を覚える合間に店長と接触し、少しでも距離を縮めれば、それだけで時花は天にも昇る気持ちに浸れる。生活が充実する。
二三歳にして初めて、恋する乙女という感覚を自覚した。
(店長の甘い美貌、温和な物腰、高すぎない身長差、いつも喜色満面だけど仕事には冷静沈着なギャップも素敵です!)
何より、二人とも丁寧語である。
部下が上司にへりくだるのは当然だが、上司までもが敬語で喋るのはツボだった。
どんな相手にも敬意を表する紳士。彼女にとって、それは理想の王子様なのだ。
「近いうちに防犯カメラの操作方法も教えますよ。時花さんに店番をお願いすることも増えるでしょうからね」
「了解しましたっ」
時花はなぜか額に手をかざし、敬礼のポーズを取った。
店長の業務連絡を受けただけなのに、幸せでたまらない。働く喜びを恋心と混同しているのは間違いなかった。