時花は耳を疑った。
この「好き」は、どういう意味だろうか。店員として好きなのか、それとも――?
「さ、そろそろ開店の時間です。フロアに出ましょう。今日も忙しくなりますよ!」
店長が営業スマイルで席を立った。
事務室から店頭に歩き出す。時花も慌てて後を追い、店のシャッターを押し上げた。
光が射し込む。
店内が照らされる。
燦然と輝くショー・ケースは、ブランド時計たちの宝物庫だ。あまりにも眩し過ぎて、黄金郷もかくやの様相を呈した。
大切な理想郷。
守りたい聖域だ。
ほどなく回転扉が巡り、さっそく今日一人目のお客様が訪れる。
「いらっしゃいませ! 時計のお悩みを解きほぐす『時ほぐし』へようこそ――――」
――閉幕