時花たちは、まなこを見開いて鑑定士を注目した。いや、瞠目と言うべきか。
(そう言えば聞き覚えがあります! 店長が以前勤めてた時計メーカーで、いつも対立してた上司の話! 広い額と枯れた細腕が特徴の課長さん……!)
あれは確か、店長と矢陰光の過去回想で聞いた描写だ。伏線はすでにあったのだ。
(その上司が、どうして質屋で鑑定士をしてるんでしょうか……?)
「久し振りだな、時任!」
鑑定士は素姓が割れたことで、しぶしぶ正面を向いた。鬼の形相とはこのことを差すのだろう。吊り上がった双眼、止まらない切歯、膝の上で震わせる握り拳。
迎え撃つ店長は、煩わしそうに口の端を吊り上げ、笑止してみせた。
「あはは、名前を呼ばれるなんて懐かしいですね、金時課長! 僕と光さんが三年前に会社を辞めて以来、お変わりなく……とは行かなかったようですね?」
「変わりまくったわ!」テーブルを叩く鑑定士。「あれから転落人生が始まった。認めたくはないが、優秀な貴様が抜けて以降、我が部署はみるみる業績が下がったのだ!」
「ほう?」
「貴様が提出した案件は全て、短期的には業績の邪魔だったが、長期的な視野では必要な改善策だったのだと思い知らされた……!」
鑑定士は悔いるように吐き捨てた。