(あら?)口に手を当てる時花。(この人の特徴、どこかで見聞きしたような……?)
「なるほど、あなたが鑑定士ですか」不遜に笑いかける店長。「せっかくご足労いただいたのです、じっくり話そうではありませんか。僕を見て逃げたということは、僕の顔に覚えがあるのでしょう?」
「うぐっ……こしゃくな奴め!」
しぶしぶ鑑定士は、ソファに尻を沈めた。
顔は上げない。うつむいたままだ。店長と目を合わせたくないらしい。
叶が老獪にほくそ笑んだ。
「仮説が的中しましたな。この鑑定士は『時ほぐし』を知っておりますぞ。その上で、あえて贋作騒動を起こしたと見るべきですな」
「はい。まさか鑑定士が顔見知りだとは思いませんでした――……そのスーツ姿、広い額、枯れた細腕。僕と光さんが勤めていた時計メーカーの元上司ですね?」
「!」
「ええっ!?」
真犯人が今、明かされた。