「うまく招聘(しょうへい)できそうですね」

 店長がお茶をいただきながら呟く。

「そうですねっ」隣席から肩を寄せる時花。「石上が店長に従ったのは意外ですけど」

「彼は本物のアクアノートさえ戻って来れば、他のことなど些事(さじ)でしかないのでしょう」

 両者の利害が一致したのだ。

 石上はこの結果次第で『時ほぐし』の民事訴訟を取り下げるだろう。そのためにも、ここは共闘すべきである。

「問題はどうやって鑑定士を追い詰めるか、ですな」

 叶が、しかつべらしく思案に暮れた。

 もはや弁護の依頼とは別の案件になってしまったが「乗りかかった船ですよ」と笑尉(わらいじょう)を浮かべるのがありがたい。

「時計のすり替えだけでなく、風評被害も鑑定士の奸計(かんけい)か否かを突き止めます。矢陰光さんが無実だと証明するためにも、徹底的に看破しなければなりません……!」

「て、店長、だんだん笑顔が怖くなってますよ」

 時花は若干引き気味に忠告した。

 こと矢陰光の話になると、店長の剣幕が深刻さを増す。無理もない、かつての恋人であり創業者の一人だからだ。彼女の名誉に傷を付けるなど、永劫に許されない。