4.
さっそく石上は質屋に電話をかけた。
「もしもし、鑑定士さん? うん、裁判の準備は順調だよ! そのことなんだけど、実は鑑定士さんにも証人として出廷して欲しくてさ。贋作判定した本人の証言もあった方が有利なんだよ。俺の顧問弁護士も交えて打ち合わせしたいんだけど、今から時間は空いてるかな……うん、おう! じゃあさっそく迎えに行くよ!」
石上はガッツポーズとともに通話を切る。
打ち合わせと称しておびき出し、鑑定士を問いただす算段だ。
ちょうど夜のとばりが下りた頃で、質屋は閉店時間だった。ぼちぼち鑑定士も帰途に着くだろうと睨んで、話を持ちかけたのが奏功した。
「鑑定士、来るってさ。俺と溝渕弁護士で迎えに行こう」
石上が勢い込んで安物のスーツを翻した。
溝渕も同伴すべくソファから立つ。恐らく事務所の社用車で出かけるのだろう。
「では『時ほぐし』の皆さんはしばらく、ここで待機をお願いします」
溝渕はそう言い残し、留守を事務員に任せた。
事務員がお茶のお代わりを持って来る。時花たちは何時間でも居座れそうだ。