「ああ、移動したよ」
「その際に、こっそりすり替えられたんですよ。もしかしたら、鑑定士が闇ブローカーの恐れもありますね。あらかじめコピー品を所持しておき、嘘の鑑定をしてすり替える……そうやって本物をくすねつつ、客には金を払わずに済む手法です」
「そうだったのか!」
「となると、当店の悪評を拡散させたのは、石上さんの仕業ではなかったのですか?」
「は? 拡散? 何のことだよ?」
石上は腕組みして考え込んだ。本当に知らないらしい。
「了解しました、風評被害も鑑定士の工作で確定ですね。贋作の出どころをごまかすために『時ほぐし』を悪者に仕立てるとは……! 石上さん、鑑定士とお話できますか? ここへ呼び出すのも良いですね。白黒つけましょう」
店長の笑顔が恐ろしい。目だけ笑っていない。
「時計にまつわるトラブルはお任せを。この時任刻が、最後の謎を解きほぐしてご覧に入れましょう!」
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