「はい、時間は有り余ってるから構いませんけど……」
即断即決の店は次のステップも早い。一応、即日採用に備えて印鑑も持参しているが、さっそく研修まで始まるとは思わなかった。
仮に今日が無理でも、後日に回されるだけだろうから、今のうちに受けるべきだ。時花に断る理由はない。
「では参りましょうか」席を立つ店長。「店の衣装は貸与しますので、ご安心を。レディースのフォーマル・スーツを正しく着てもらいます。スカートかパンツルックかは選べます。また、中古品を質入れするお客様がいらっしゃった場合、僕が対応します。鑑定技能が不可欠ですので、必ず僕を呼ぶようにして下さい」
「は、いや……あの、えっと、次から次へと矢継ぎ早に言われましても……!」
ニートだった時花は、連続で物を申されると頭が付いて行かない。そうでなくとも鈍い性格だから、理解するまで時間がかかって仕方がない。
時花の新生活が、止まっていた人生の秒針が、再始動する。
そして――時計にまつわる『解きほぐし』もまた、開幕したのである。
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