「ほら! 銀座でもらった鑑定書もあるよ!」
石上はポケットから封筒を投げた。
店長が拾って、広げてみる。机上のアクアノートと鑑定書の記述が合っているかどうか比較を始めた。店長も鑑定を生業とするだけに、審美眼の鍔ぜり合いが火花を散らす。
「――ふふっ。これはおかしいですね」
やがて、店長は鼻で笑った。
「何がだよ?」
身じろぎする石上と溝渕に、店長が落ち着き払って申し渡す。
驚天動地の真実を――。
「これは、当店が販売したアクアノートではありません。そういう意味では、確かにこれは『偽物』ですね」
「何だとぉ!?」
天地がひっくり返りそうだった。
もはや本物とか贋作とかいう次元ですらない。それ以前の問題だ。この商品を「知らない」と断じたのだから――。