事務員が緑茶を配り、ソファに向かい合った総勢五名は改めて挨拶を交わした。

「俺が原告の石上三年さ。お前ら絶対許さないよ? 必ず地獄に叩き落とす」

「その弁護を(おお)せつかりました溝渕と申します……おっとクライアント、それ以上の暴言は慎んで下さい。裁判前なのにこっちが不利になるじゃないですか」

「チッ……」

「僕は『時ほぐし』の店長、時任刻と申します」

「わ、私は同じく従業員の、風師時花ですっ」

 頭を下げる時花は、石上をちらちらと観察した。

 間違いない、あのときのヒモ大学生だ。時花もメールで口説かれたことがある。チャラチャラした印象は変わらず、加えて一方的な逆恨みも買っているせいで好感度は最悪だ。

 最後に叶が自己紹介してから、間を置かず本題へ入る。

「さっそくですが、原告側が民事裁判を起こすにあたって、争点は『時ほぐし』で購入した腕時計の真贋鑑定……で間違いありませんかね?」

「その通りさ!」半立ちになる石上。「よりによって一番高いパテック・フィリップが贋作だったなんて、大損だよ! 必ず代金を取り戻して、賠償金も払わせてやるからな!」

(そんなこと言われましても……)

 時花は胸の内で狼狽するばかりだ。