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 店の定休日に弁護士と落ち合い、ほぼ二つ返事で契約を結んだ。

 事前に電話やメールで相談したのだろう。店長が頼った法律事務所は、老練なる弁護士が代表を務めており、本件もこの人がじきじきに担当した。

「初めまして、弁護士の(かのう)時親(ときちか)と申しまする」

 名前に『時』の字が入っている。店長がどんな基準でこの弁護士を選んだのか、時花は察した。のちに『叶わぬ時には親を出せ』という格言があることも知った。

 叶はさっそく内容証明を精査し、原告側へ連絡を取る。すると相手も、一度腰を据えて面談したいと申し入れて来た。

(さすが手際が良いですね……専門家は頼りになります)

 時花はのほほんと感心する。知らない分野なので、頭の理解が追い付かない。

 ともあれ、依頼して正解だった。店長も余裕が生まれるし、適切な対応が出来る。

「今日これから、原告側の法律事務所で会う約束を取り付けましたぞ」