しかし、店の存続という意味においてなら、働きたいという告白でも想いは伝わったようだ。店長は深々とえくぼを刻んだ。
「承りましたよ、時花さん。研修期間は特に設けていませんでしたが、新人のあなたにそこまで言わしめた手前、僕も腹をくくらなければいけませんね」
時花の手を取る。
ぎゅっと包むように握る。
時花は面食らって、ティー・カップを掴み損ねた。
「研修期の終わりに、反撃開始としゃれ込みましょうか。僕としても、このままやられっ放しでは癇に障ります。絶対に『時ほぐし』を潰させはしません!」
研修期の終わりに――。
――反撃?
何か方策が浮かんだのだろうか。
「今の僕たちには何も出来ませんが、外部の者……例えば僕たちも弁護士を雇って、裁判の対策を練ることは出来ますよね? 餅は餅屋、風評被害を防ぐ方法を考えましょう」
店長は流暢に笑言して聞かせた。
おもむろにスマートホンを出し、法律事務所の検索を始める。さすが手が早い。
「わぁ! こっちも動き出すんですね?」
「はい。営業妨害を受けたという名目で、こちらが逆告訴をすることだって可能ですよ。互いに引かず、泥沼化を匂わせて示談に持ち込むのが最適でしょうね」
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